テーバイ攻めの七将

der Zug der Sieben theben

岩波文庫の『テーバイ攻めの七将』アイスキュロス,高津春繁訳が復刊された。この「テーバイ攻めの七将」は別に「テーベの七雄」などとも称される。

これをドイツ語にすると der Zug der Sieben theben となる。Zug は一番普通には「列車」だが「一連のもの一般」をさす。英語の train に重なり,それよりもかなり広い意味の単語だ。Sieben は英語で seven,theben は「テーバイの」という形容詞。

上の連語を直訳すると,「テーバイの七人の小隊」ということ。普通は先にあるように「テーベの七雄」と訳せるだろう。 ギリシア神話・伝承の系列では,父を殺し母を娶った「オイディプス王」の悲劇,兄弟の埋葬をめぐって肉親が対立する「アンティゴネー」の悲劇などに連なる,「テーベの七雄」と呼ばれてきた古典があるわけだ。ただしこの七雄はテーベ側には属さず,それぞれ古い因縁からテーバイに対して立った七人であるから,高津は「テーバイ攻めの…」と補って訳した。

さて,Zug はドイツ語としては相当な多義語ということになり,訳語をここで並べると紙幅が尽きるほどの範囲をカバーしている。それでいずれの独和辞典も Zug の項には沢山の語義,連語,例文がならぶことになる。

『新訂独和辞典』、相良守峯他編、博友社、1963年,には上の der Zug der Sieben theben が載っている……なんと「列車」の項のもとに。いわく:

「テーベ発七時の列車」

……嘘ばっかり。

大学でもこの話の可笑しさを伝える手段を今まで欠いていた。高津訳アイスキュロスの復刊によって一つ使いうるネタが増えた。

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Published in: on 2010/06/19 at 15:14  テーバイ攻めの七将 はコメントを受け付けていません。  
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