曲がって戻る「レトルトカレー」

「レトルト」の語源は retort < retorte [fr.] < retorta [méd. lat.] = retorquere [lat.] と順に遡り、根っこはラテン語の「曲げ戻す、捩り返す、折り返す」の完了分詞女性形、上の通りその原義は「曲げ戻された」である。ではいったい何が曲げ戻されたのであろうか。「レトルトカレー」のどこが「曲がって戻って」いるのか?

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Published in: on 2015/03/28 at 00:25  コメントする  

開発者名を冠した新案器具

医療器具(手術用具)のカタログに見た

手術用クリップのトップメーカーとして業界に知られる「ミズホ株式会社」というメーカーがある。経済産業省の認定によれば規模は中小ながら、脳動脈瘤手術用の「杉田クリップ」の生産で脳外科医の間で世に欠くべからざるプレゼンスを誇っている会社であり、経産省の「グローバルニッチトップ企業100選」にもノミネートされている。

同社ウェブサイトのカタログを覗こうとすると「あなたは医者ですか」と訊いてくる。正直に「いえ、しがない物書きで……」などと答えると、カタログではなくトップ頁に飛ばされてしまうのだ。門前払いである。「どういうお店か、確かめてから入ってきてね」という具合。あなたの来るところじゃないから……

完全に一見さんお断り、というか「お医者さん以外お断り」というかんじで、そりゃそうだミズホはプロ相手の特殊な商売である、物見遊山で来られても困るといった態度が実直な感じで好ましい。実際私は物見遊山であった。済みません、本当に。

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Published in: on 2015/03/16 at 19:45  コメントする  

レトロニム……古いものに後から新しい名を与える

人力車

「くるま」というのはもと人力車のことだった。たとえば落語で「吉原までくるまで」と言えばタクシーに乗っていったという話ではなく、人力車をチャーターしたということだ。「くるまといえば人力車」の長い時代を経て、その後 Automobile が上陸した時には「くるま」と区別して特に「自動車」という語を用いた。これがざっくり百年ほど前のことに過ぎない。

ところがこの Automobile はあっと言う間に物流の、とりわけ人間の輸送の主役におどりだし「くるま」の一語を人力車から奪ってしまう。「くるまといえば自動車」の時代になってしまったのだ。

さて困ったのは古い「くるま」の方だ。こちらを新しい「くるま」から区別しなければならない……そして拵えられた新しい用語が「人力車」だったのである。

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Published in: on 2015/03/07 at 15:07  コメントする