中二病、あるいは厨をめぐる用語史抄その2

前々エントリー「流行り言葉の栄枯盛衰:ギャルとフェチ」および、
前エントリー「中二病、あるいは厨をめぐる用語史抄その1」を承けて続く:

中二病とは別に発達していた「厨房」

さて、前エントリーに述べたような経過を辿って、伊集院の「中二病」は徐々に意味を狭め「自虐の詩」すなわち自嘲の反省から、ひとの未熟をくさす罵倒表現へ、さらには「厨二病」とか「厨っぽい」といった形を得て「重篤症例の邪気眼妄想を指す用法」へと片極化を遂げてきたことが確認された。

しかしここに、とりわけウェブ上のジャーゴンとして「別のルート」を辿って成立してきた「厨房」という言葉がある。「厨二病」は、この「厨房」と付かず離れず隠微に交叉して、その意味に振幅を刻んでいる。では「厨房」とは何の謂か。 (さらに…)

Published in: on 2013/12/22 at 00:31  コメントする  

中二病、あるいは厨をめぐる用語史抄その1

前々エントリー「流行り言葉の栄枯盛衰:ギャルとフェチ」を承けて続く:

今回のテーマは「中二病」ないし「厨二(ちゅうに)、厨(ちゅう)」という言葉である。もっともこのエントリではこの用語の変遷を瞥見することばかりが主眼であり、ここにことさら新しい知見は登場しない。ネット言説に平生触れている者ならば周知の事情を時系列に則して整理しただけの記事である。

「厨二」はウェブ上のジャーゴンの立場を脱し、すっかり世間に定着しつつある。同時に前エントリー(流行り言葉の栄枯盛衰:ギャルとフェチ)に触れたような、流行語には不可避である「語義の変転」が当然のこととして見受けられる。ところで、その変化に興味深い部分——珍しい分化が生じている。この言葉はちょっと面白い変転を辿っている。一言でいえば「同時に片極化し、拡大もしている」のである。意味が「狭まっ」ていると同時に「拡がっ」てもいる。こうした自家撞着がどうして生じたのであろうか。 (さらに…)

Published in: on 2013/12/11 at 16:48  コメントする