わたしは漢字仮名変換には古くは EG Bridge、いまは「かわせみ」を愛用している老頭児マカーであるが、ゆえあってグーグル漢字変換エンジンを持ち出すことがある。ところがこれが腹立たしい。
グーグル漢字変換エンジンの大きなお世話
たとえば「レベル」ってタイプするとグーグル漢字変換エンジンは自動で英綴に直してくれて、「このLevelになると……」と、こういった具合の出力になってしまった。
わたしは漢字仮名変換には古くは EG Bridge、いまは「かわせみ」を愛用している老頭児マカーであるが、ゆえあってグーグル漢字変換エンジンを持ち出すことがある。ところがこれが腹立たしい。
たとえば「レベル」ってタイプするとグーグル漢字変換エンジンは自動で英綴に直してくれて、「このLevelになると……」と、こういった具合の出力になってしまった。
「山田太郎」といえばわたしの世代にはまずは『ドカベン』の山田太郎であろうが、この名前はある意味特権的な名前である。「名前の代表」として使われることが多いのだ。
将棋の話——いや飯(めし)の話かな。
登場する人物はぜんいん偉人枠につき、以下しばしば敬称略、また段位冠位は執筆時。
名人位への挑戦権を争う順位戦は持ち時間6時間の長丁場だ。これより長い持ち時間の棋戦(たとえば名人戦、竜王戦などの番勝負)は二日制になるので、この順位戦が一日連続の対局時間としては最長の棋戦ということになる。朝始まって日付が変わるまで対戦が続くのが普通で、最高A級リーグ戦の最終二局はリーグ参加者が全員同日に熱戦を繰り広げる。とくに三月初旬、東京の将棋会館に集まって行われるA級最終局(9回戦)の日を「将棋界の一番長い日」などと言い習わしている。
各自6時間の持ち時間だから二人で12時間の考慮時間が用意されている、しかしそれを使い切っても「一分将棋」でまだ対局は続く。大変な話だ。
だいたい人というものは一つことを一時間と考え続けていられないものではないだろうか。
すさまじい脳力の持ち主たちが朝の十時から、深夜十二時を超えるまで、知力を、読みを競い合うのだ。2、3キロ痩せるという話がある。
「頭痛が痛い」は良く知られた重複表現でありもはやわざと使って見せる体のもの。古くは岩城徳栄(「バカな娘」というキャラが売りだったタレント)の「持ちネタ」でもあった。なるほど「頭痛が痛い」はいかにも無用な冗語という感じがある。冗語、重複表現の代表格としての地位を確立している。
それでは「神経痛が痛い」はどうだろうか。
「日本と欧州連合(EU)の経済連携協定(EPA)交渉で、EU は域内にあるワインやチーズなどの有名産地名を使った商品名約200件について、勝手に使えないようにすることを求める方向だ。合意内容によっては、日本で定着した商品名が変更を迫られる可能性がある。
特定の産地名を商品名などに使う権利は「地理的表示」(GI)とよばれる知的財産のひとつ。
EU は域内にブランド価値が高い産地名を使った食品やお酒が多く、いまのところ、日本に対して205件の商品名の使用制限を求める方向で加盟国と調整している。 朝日新聞が EU 関係者から入手したリストには、フランスのワイン産地に由来した「シャンパン」や「ボルドー」、イタリアのチーズ産地に由来した「ゴルゴンゾーラ」や「パルミジャーノ・レッジャーノ」、英スコットランドの「スコッチ・ウイスキー」などが挙がっている。」(朝日新聞web版 2015/02/26、ただし英数全角を半角にした)
英語史業界ではゲルマン祖語から派生したアングル、サクソン、ジュート人の言語を英語の元祖としており、ざっくり時代ごとにその後の変化を見ると、古英語(5c. – 11c.『ベオウルフ』など)の時代、中英語(11c. – 15c.『カンタベリー物語』など)の時代、近代英語(16c. – 19c. シェイクスピア以降)、二十世紀以降は現代英語などと分けている。
英語史では、上の古英語から中英語に移り変わる契機を 1066年のノルマン・コンクエストに見ている。ブリタンニアの地がフランス北部出のノルマン人に占領されたのだ。支配者階級がフランコフォン(フランス語話者)にすげ変わったため、国の上層階級を中心にフランス語系の語彙の大量流入が起こった。
「レトルト」の語源は retort < retorte [fr.] < retorta [méd. lat.] = retorquere [lat.] と順に遡り、根っこはラテン語の「曲げ戻す、捩り返す、折り返す」の完了分詞女性形、上の通りその原義は「曲げ戻された」である。ではいったい何が曲げ戻されたのであろうか。「レトルトカレー」のどこが「曲がって戻って」いるのか?
手術用クリップのトップメーカーとして業界に知られる「ミズホ株式会社」というメーカーがある。経済産業省の認定によれば規模は中小ながら、脳動脈瘤手術用の「杉田クリップ」の生産で脳外科医の間で世に欠くべからざるプレゼンスを誇っている会社であり、経産省の「グローバルニッチトップ企業100選」にもノミネートされている。
同社ウェブサイトのカタログを覗こうとすると「あなたは医者ですか」と訊いてくる。正直に「いえ、しがない物書きで……」などと答えると、カタログではなくトップ頁に飛ばされてしまうのだ。門前払いである。「どういうお店か、確かめてから入ってきてね」という具合。あなたの来るところじゃないから……
完全に一見さんお断り、というか「お医者さん以外お断り」というかんじで、そりゃそうだミズホはプロ相手の特殊な商売である、物見遊山で来られても困るといった態度が実直な感じで好ましい。実際私は物見遊山であった。済みません、本当に。
「くるま」というのはもと人力車のことだった。たとえば落語で「吉原までくるまで」と言えばタクシーに乗っていったという話ではなく、人力車をチャーターしたということだ。「くるまといえば人力車」の長い時代を経て、その後 Automobile が上陸した時には「くるま」と区別して特に「自動車」という語を用いた。これがざっくり百年ほど前のことに過ぎない。
ところがこの Automobile はあっと言う間に物流の、とりわけ人間の輸送の主役におどりだし「くるま」の一語を人力車から奪ってしまう。「くるまといえば自動車」の時代になってしまったのだ。
さて困ったのは古い「くるま」の方だ。こちらを新しい「くるま」から区別しなければならない……そして拵えられた新しい用語が「人力車」だったのである。