無駄な冗語を重ねて重複使用する重言用法について

「頭痛が痛い」は良く知られた重複表現でありもはやわざと使って見せる体のもの。古くは岩城徳栄(「バカな娘」というキャラが売りだったタレント)の「持ちネタ」でもあった。なるほど「頭痛が痛い」はいかにも無用な冗語という感じがある。冗語、重複表現の代表格としての地位を確立している。

神経痛が痛い

それでは「神経痛が痛い」はどうだろうか。

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Published in: on 2015/10/31 at 21:56  コメントする  

「釈迦に説法」を各国語で

「釈迦に説法」は大辞泉に依れば「知り尽くしている人にそのことを説く愚かさのたとえ。釈迦に経(きょう)。」ということだが、類似の諺は世界の国々にもあまたある。

まだコレクション中だが、中間報告。

看板に偽り? 地名を含む料理や食品

「日本と欧州連合(EU)の経済連携協定(EPA)交渉で、EU は域内にあるワインやチーズなどの有名産地名を使った商品名約200件について、勝手に使えないようにすることを求める方向だ。合意内容によっては、日本で定着した商品名が変更を迫られる可能性がある。

特定の産地名を商品名などに使う権利は「地理的表示」(GI)とよばれる知的財産のひとつ。

EU は域内にブランド価値が高い産地名を使った食品やお酒が多く、いまのところ、日本に対して205件の商品名の使用制限を求める方向で加盟国と調整している。 朝日新聞が EU 関係者から入手したリストには、フランスのワイン産地に由来した「シャンパン」や「ボルドー」、イタリアのチーズ産地に由来した「ゴルゴンゾーラ」や「パルミジャーノ・レッジャーノ」、英スコットランドの「スコッチ・ウイスキー」などが挙がっている。」(朝日新聞web版 2015/02/26、ただし英数全角を半角にした)

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英仏間の二重語、再会する生き別れの兄弟

軽く英語史

英語史業界ではゲルマン祖語から派生したアングル、サクソン、ジュート人の言語を英語の元祖としており、ざっくり時代ごとにその後の変化を見ると、古英語(5c. – 11c.『ベオウルフ』など)の時代、中英語(11c. – 15c.『カンタベリー物語』など)の時代、近代英語(16c. – 19c. シェイクスピア以降)、二十世紀以降は現代英語などと分けている。

英語史では、上の古英語から中英語に移り変わる契機を 1066年のノルマン・コンクエストに見ている。ブリタンニアの地がフランス北部出のノルマン人に占領されたのだ。支配者階級がフランコフォン(フランス語話者)にすげ変わったため、国の上層階級を中心にフランス語系の語彙の大量流入が起こった。

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Published in: on 2015/04/05 at 00:31  コメントする  

報酬的な意味合いの

rémunératoire「報酬的な意味合いの」という形容詞がある。逆転ホームラン的な力を持つ不思議な単語である。

例えば sanction という言葉は通常は「懲罰」とか「処分」といった消極的な意味で使われるが、sanction rémunératoire という具合に上の形容詞を付けると「褒賞」という意味になるというのである。ちょっと意外の感がある。語義の逆転が生じている。
しかし「報酬的な意味合いの懲罰」とは具体的にはどういうものなのだろうか、想像がつかない。

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Published in: on 2015/02/15 at 14:28  コメントする  

「汚名挽回」は誤用か否か

twitter で「汚名挽回」の名誉回復が論じられている。

誤用ではない?「汚名挽回」「名誉挽回」をめぐる辞書編纂者らの議論

辞書編纂者の方々は文証が多ければ、誤用か否かとは別に「現に用いられる」という理由でまずは用例として取り上げざるをえまいし、そこに誤用であるか否かの判断が必要ならしかるべき基準のもとに判断を下すだろう。以下、手許のカードから。大御所、ベテランから最近のものまで、わりと用例はある: (さらに…)

Published in: on 2014/05/02 at 16:46  コメントする  

うなぎ文の一般言語学

これは以前のエントリー「ウナギ文の好例コレクション(リンク)」の補遺として書かれ始めたものだった。そのエントリーに追補しようと考えていたのだが、この「追補」の方が本体より長くなってしまう勢いである。これは別エントリーにするに如くはないと考えた。

以下に新たな例を付け加えるとともに、いわゆる「うなぎ文」の問題圏から、「名詞文」の問題、さらにはドイツ語・ラテン語の非人称受動の問題、フランス語の代名動詞の問題まで、一般言語学的に話を拡げていく。というか、書いてみたら勝手にそこまで話が及んでしまった。 (さらに…)

犁を犁と言う、猫を猫と言う、桶を桶と言う

英語に To call a spade a spade という表現がある。直訳すれば「犁を犁と言う」という意味だが、「物事をはっきりと言う、歯に衣着せぬ言い方をする」といったほどの慣用句である。これが何を起源とした表現なのか、ずっと気になっていた。 (さらに…)

Published in: on 2012/08/29 at 17:06  コメントする  

具体の科学4:あの部屋

トイレのさまざま

もったいつけたが「あの部屋」とは無論その部屋のことである。トイレという言葉はもともとはトイレのことではなかった。toilettes もとは「身だしなみ」の意味。 (さらに…)

Published in: on 2012/08/24 at 15:51  コメントする  

具体の科学3:部屋

これは日本語でもさほどのカテゴリー化はなされていない。つまり部屋一般と言うならともかく、日本語でも「〜部屋」「〜室」「〜房」「〜所」などと言い分けられている。

問題は「ある特定の部屋を呼ぶ時に chambre というのか、salle というのか、cabinet と言うのか、それ専用の言い方があるのか」という実用上の目安をつけることである。しかし今のところあんまり見通しは立っていない。 (さらに…)

Published in: on 2012/08/20 at 15:38  具体の科学3:部屋 はコメントを受け付けていません